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医師の方々への感謝とリヴァプールの試合を楽しめる日が来ることを願って

クロップの流儀 言語と文化

いまや国際的な言語として英語は誰もが身につけるべき言語でしょう。

英語はあなたのコミュニケーションの範囲を拡大します。より多くの人と接することで私たちの主張はより多くの観点を含みます。コミュニケーションは誰しもにとってなくてはならないものです。そしてリヴァプールの監督であるユルゲン・クロップは何よりもコミュニケーションを重要視していることが窺えます。

 

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多くの地域から選手が集まっているクラブで、どうしてもつきまとうのが文化と言語の問題。しかし個人的にはこれらは別にグローバルな場所だから起きる問題ではなく、ごく身近な場所でもふと感じることのある問題だと思います。クロップはチームにネガティブな側面を加えないようごく自然な方法でこの2つの問題と付き合っています。そこで今回はそんなクロップがどのようにそれを実践しているかに焦点を当てていこうと思います。

 

①何よりも大事なのは違いへのリスペクト

戦術家と評されるペップ・グアルディオラと比べてクロップはモチベーターと称されることが多いです。ゲーゲンプレスの第一人者であり戦術面でも多くの変化を取り入れてきましたが、クロップという人が最高の監督であると評されるのは、彼の真髄がひとえにコミュニケーションにあるからです。

 

この記事で、クロップが何よりも他人をリスペクトし、より良い関係を築くために努力を重ねつづけていることが分かります。

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なによりも違う文化圏に住む人との間には、文化と言語の壁があります。しばしばそれらは誰もが持つ権利と同じで互いに尊重されなければいけないものです。

 

数日前の授業で菜食主義に関するディスカッションを行ったのですが、恥ずかしながら私はveganの人々の存在を知りませんでした。しばしば日本人は菜食主義者の人々のことをvegetarianと思いがちですが、ベジタリアンの中にも野菜の他に卵や魚を食べる人もいれば、魚は食べず野菜と乳製品のみを食べる人もいます。そしてヴィーガンの人々は植物性の食品しか口にしません。

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私はこれらの違いを知らなかったし、同時に知らなかった自分にショックを受けました。東京オリンピックに向けてしばしば都心のレストランはベジタリアンの人々のためのメニューを取り入れたとのニュースも流れていましたし、自分はそれなりに異文化への知見があると思っていました。でも実際は”知らない”ということがその文化への一種の無関心あったり、あるいは冒涜であったとも言えるかもしれません。

 

リヴァプールにはイングランドの選手だけでなく、サラーやマネなどアフリカ系の選手もいれば、ボビーやファビーニョ、南米出身の選手、そしていまやアジアからは南野拓実が在籍しており、当然彼らは自分たちの慣習が受け入れられることを望んでいます。その点(これらも知らなかったのですが)クラブにはイスラム圏の選手のための礼拝堂があり、クロップ自身が他文化理解の姿勢を明確に示すことで、肌の色や人種、言語や宗教による蔑視を良しとしないチームの雰囲気につながっているのだと思います。当然それが一体感を生み出し、選手同士や監督やコーチとの信頼につながっているでしょう。コミュニケーションと差別は最もかけ離れたものです。

 

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②良いプレーのために良い環境を

次に、言語力は選手にとっても監督にとっても非常に重要な意味を持ちます。クラブに加入するなら当然その国の言語を学ぶ必要があります。英語はその点最も多くの人間にとって便利なツールであり、英語が話せないだけでパスさえもらえず退団してしまう選手がいたと聞いたことがあるくらい、サッカーと言語、しばしば英語の間には強い結びつきがあります。

監督にとっても英語を話せれば、プレミアリーグでは大半の選手と通訳なしで会話できるでしょうし、自分の伝えたいことを他人を介さず自分の口で相手に伝えることはコミュニケーションにとって非常に重要です。

 

しかしクロップの良いところはかといって英語やクロップの母国語であるドイツ語を話せない選手を邪険にするのではなく、逆に手厚くサポートしてくれる点です。ドルトムント時代、クロップは香川選手とコミュニケーションを取るために日本人の通訳をチームに招き入れ、さらにはチームにとって神聖な場所であるロッカールームやベンチにまで帯同を許可したと聞いたことがあります。

 

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言語力に不安のある選手にとって、新天地で活躍するためにはメンタル面の問題が大きな影響を持つでしょう。その点クロップやチームが常に馴染みやすい環境づくりをこころがけているからこそ、選手は快適に感じ、プレーに集中できるのだと思います。クラブの公式Youtubeから、チームの誰かが誕生日の時は、それぞれの母国語でバースデーソングを歌い合っている動画も挙がっています。

 

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”郷に入っては郷に従う”ことも非常に大事ですが、一方で選手がストレスフルになりすぎないように十人十色のチーム作りを実践している点が非常にコミュニケーションを促す上で重要なファクターとなっていると思います。”お互いのことを知りたい”という思いこそチームプレーには不可欠ですし、どこにおいても必要とされる感情です。ただ設備や待遇を良くしても良いプレーは生まれない。良いプレーのために良い雰囲気を作りだすことにおいてリヴァプールよりも上のクラブはなかなかいないのではないでしょうか。

 

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今回はクロップがコミュニケーションを取る上で、その前段階として重要なエレメントである言語と文化との付き合い方に焦点を当ててみました。しばしばこれらは障害であったり問題となって、私たちの人生に立ち塞がります。しかしそれらと誠実に向き合うことで、必ず各々のマインドに新たな観点や気づきを与えてくれます。だから私たちは言語と文化の問題から目を背けてはいけないと思います。

 

次回はクロップという監督がなぜこんなに誰もに愛されるのか?そのコミュニケーションの真髄を自分なりに分析したいと思います!

練習が再開しましたが、選手や関係者の方々の健康を祈って。それでは!

 

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